東京高等裁判所 昭和30年(う)2293号 判決
被告人 梁錦翰
〔抄 録〕
論旨第一点について。
外国為替及び外国貿易管理法第二十一条の規定によると、本邦内にある者は居住者たると非居住者たるとの別なく、本邦内にある対外支払手段につき同条所定の集中義務を課せられ、また同法第二十二条によると居住者たる以上、本邦にあると否とを問わず、対外支払手段につき同条所定の集中義務を課せられる旨規定されているので、この両法条を対比して考察するに、その集中方法は両者全く同一であるから、本邦内にある対外支払手段については、居住者が本邦にある限り同法第二十一条によつて集中義務を課せられる関係上、同法第二十二条によつて集中対象とされる対外支払手段は、専ら本邦外にあるもののみを指称するものと解するのが相当である。ところで原判示各弗小切手が本邦内において振り出された対外支払手段であり、また被告人が本邦内の居住者であることは記録上明白であるから、被告人の本件所為については同法第二十一条を適用すべきであつて、所論のように同法第二十二条を以て律すべきでないといわなければならない。而して同法第二十五条は本邦人以外の居住者(外国人)が同法令の適用外の取引によつて取得した対外支払手段等については同法第二十二条による集中義務を課しない旨を規定しているのであるから、同法第二十二条の適用のない本件に対しては、たとえ被告人が本邦居住者たる外国人であり、且つ本件弗小切手が同法令の適用外の取引によつて取得した対外支払手段であつても、同法第二十五条の規定によつて集中義務を免除せらるべき筋合ではない。それゆえ原判決が被告人の本件所為を同法第二十一条違反に問擬したのは正当であつて、原判決には所論の如き擬律錯誤の違法は存しない。論旨は理由がない。
(谷中 坂間 久永)